Web ZINE『吹けよ春風』

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忘れてしまうもの(ちゃっきー)

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もうだいたい人様に

多少なりとも有益になりそうなネタというものが尽きてしまって、

何を書いたらいいか、わからない。

 

そもそもすべて浅く広く生きてきたので

知識も経験もまんべんなく半端なので。

 

かと言って今をときめく脚本家の同級生に頼まれたら断る理由も特にないし、

もういっそなんでもいいんだろうな、と思うことにしてiPhoneのキーボードを触っている。

 

とりあえず、

何について書こうか。

 

いろいろ考えを巡らせながらも

今、一文を書いて改行した。

 

「運命の人を探している」

 

この一文で終われたらかっこいいのではないか。

 

記事がひとつ増えれば良さそうなので、とりあえずやってみよ。

 

***

 

今日はくしゃみが止まらない一日だった。

 

花粉症だと自覚すると

いつ始まっていつ終わるのか、というのをくしゃみばかりが出る一日を迎えるたびに考える。

 

札幌に住んでいた時も、だいたいいつ頃最初の雪が降って、

根雪になって、溶けて、忘れた頃に降るよね〜

みたいな自然のルーティンのことを雪が降るたびに考えていた。

 

そら豆がスーパーに並ぶのはそろそろだったかな、とか

趣味であるいくらの醤油漬けを作るために

筋子の時期になると色んな魚屋さんの広告をチェックし始めるのはそろそろだったかなみたいなことも、

毎年同じ時期に同じようなことを考えはじめている気がする。

 

でもそんなことは、

だいたい1年経ったら忘れてしまう。

 

毎年毎年、同じ時期に似たようなことを思い出して

冷静に考えたらアホなのかな、とも思うが、

言い方を変えれば

季節を感じて生きているということにもなる。

一生交わることがないと思っていた

「丁寧な暮らし女子」との

唯一の共通点かもしれない。

 

もっとだいじなことなのに

時間が経つと忘れてしまうことがある。

 

人の顔や名前だ。

 

正確に言うと、1日でも3日でも5分でも、

忘れる時は忘れる。

たぶん、人よりも忘れやすいし苦手だ。

昨日は仕事で撮影している最中に、

カメラマンの名前を声をかけるたびに忘れて名刺を常に握りしめていた。

 

でも人の顔や名前を忘れるたびに

あーなにか他のことを覚えて

脳のリソースが足りなくなったんだなあ、

私の脳みそちっさいなあ、としみじみ考えて

忘れてしまっただれかのことを想うと

ちょっと人間っぽい自分がかわいく思えたりもするから、

まあいいか、と着地する。

そんなことばかり繰り返している30年ちょっとだ。

 

これまではそれほど不便に思ったことはなかったのだけど

最近は人の顔や名前を思い出せないことで

めぐりめぐって自分が傷ついてしまっている。

 

 

一目惚れしたはずの人が、思い出せない。

 

 

どういうこと?と思うでしょう。

でもそういうことなのだ。

 

男性に興味はあるし、

運命の人はどこかにいると信じているけれど、

特別結婚願望も強くなく、彼氏も欲しいっちゃ欲しいけど、要らないっちゃ要らない。

 

それでもたまには

「異性として見られる」という状況を忘れないように、

マッチングアプリで知り合った人と

デートしたりしていて、

最近、メッセージのやりとりをしていて

すごく居心地のいい人と知り合った。

 

彼のプロフィールの顔写真は

食事をしているところ(後で聞いたらチャーハンを食べているシーン)を友達が撮りました、という写真1枚。

年齢にしては少し若めの方なのか、少し前の写真かな、というくらいで

特別イケメンという風にも見えないし

身長も体格もわからないけど、

悪い人ではなさそうだな、という印象だった。

飲みに誘うと、快諾してくれた。

 

 

デートの日。

赤羽で待ち合わせると

予定時間に少し遅れて彼が来た。

 

 

ドストライク!ビビッときた。

顔もだけど、声や喋り方や雰囲気に。

みんな「この人と結婚するかもしれない」って思ったって言うよね!あれってこれだよね!

そうか、これが運命の出会いなのか!

 

 

私は舞い上がり、大好きな酒も大して飲めず

自慢の胃袋も胸がいっぱいで使い物にならず

緊張して何を口走っていたのかも

あまり覚えていない。

 

とにかく楽しかったし、

この人が運命の人なのかもしれないとも思ったけど

「3年ぶりに女性とデートした」と言われて

さすがに詐欺師かもしれない、とも思った。

でも彼になら騙されてもいい。

デート中は、こんなにハッピーな時間を色褪せさせたくない!と

彼のことをずっと見つめていた。

 

 

久しぶりに来たフィーバーは朝を迎え、

数日はLINEで楽しいやりとりも続いていたのだが、

そのあと月一でしか既読にならなくなった。

 

私も5時 - 9時の仕事をしたことがなく、

彼も業界的にブラック感のある職人系職業だと理解しているので頻度については

お付き合いしているわけではないので

連絡がくるだけいいか、と思う反面少し寂しくもある。

 

それでもこんなに潤った気持ちでいられるのは久しぶりで

ドキドキやキュンはやはり心の栄養だなあと実感する。安いかもしれないけどそんなもんだよ。

 

なのに

 

彼と会って2か月弱。

 

 

待ち合わせ場所で

居酒屋で

赤羽の歩道で

 

 

そばにいた彼の顔が思い出せない。

 

 

チャーハンショット以外にもう一枚もらった写真があるので静止画は手元にある。

でも、脳内で何度だって繰り返し見たい

ちょっと舌がでる笑顔とか

目標や仕事をの話をする真剣な顔とか

ワンピースのキャラに憧れて開けたというピアスの話をしてる顔とか

どんどん再生できなくなっている。

 

残像は残ってるけど、みたいなぬるい話ではなく

残酷にも

Flash Playerのサポート終了画面が表示されるあの感覚。

 

最近は人と出会うとき、

生身の人間の状態であることが少ないので、より覚えられなくなっている気がするけど

 

1回しか会っていないから?

短い時間だったから?

 

それでも

こんなにも特別だと思えたのに、

忘れたくなんかないのに、と

 

大切だと思っているものを

大切にできていないようでひどく傷つく。

落ち込む。

 

 

顔を忘れてしまうのは

老いたからなのか、

運命の相手ではなかったからなのか、

はたまた自分が自分に与えているなにかの試練なのか。

 

 

まだ彼かもしれないという望みはあるし、

諦めたくもないのだけど、

いつか忘れたくても忘れられない顔をした

運命の人を探している。

 

 

***

 

ということで顔をよく忘れちゃう人、

お酒のせいにしましょう。クラフトビール買ってね。

goodbeer.jp