Web ZINE『吹けよ春風』

Web ZINE『吹けよ春風』と申します🌸

雑誌の図書館、大宅壮一文庫へ行って雑誌以外を楽しむ(相馬光)

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雑誌だけを所蔵している図書館。
所蔵はなんと80万冊(2022年4月現在)。
しかし来館者は出庫へは入れない。
そんなミステリアスな図書館の書庫に、ずいずいと入ってみた。

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この『吹けよ春風』では、毎回家でできる趣味を探す記事を書いていた。


毛布を丸めて飼い猫のように愛でる『イマジナリー猫』をしたり、

note.com
ペーパークラフトで盛大に失敗してLINEニュースにとりあげられたり、

note.com

スコーンを作るはずがガヴァドンが出来たり、

note.com
そんなトライ&エラーを繰り返していた。

 

今年もまた、家でできる趣味を試してみようかと思った。
しかし、そろそろ外に出たい気持ちもある。

なので、外に出てみた。

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東京都世田谷区八幡山

ラーメンと餃子のお店がやたらと多い町だ。

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京王線八幡山駅を下車し、徒歩8分ほどで外観が見えてくる。

 

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雑誌図書館の名前は、公益財団大宅壮一文庫

「クチコミ」や「恐妻」、「一億総白痴化」といった言葉を生んだ評論家、大宅壮一氏が個人で収集していた雑誌コレクションを引き継いで雑誌図書館として一般に解放されている施設だ。

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閉架式の図書館なので、書庫に入ることはできない。

だけど今回は、開館時間前に閉架式書庫の内部に入ることができた。

 

ちなみに私はこの図書館に関しては、よく利用される方よりも知っている自負がある。

なぜなら働いていたからだ。

2016年頃から今年の頭までここで働きながら脚本の仕事をしていた。


元気にしてるかな、あのバッタ……。

 

ちなみに1階の大宅壮一文庫の仕事紹介のパネルにも私がいる。

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『BACK TO THE FUTURE』のTシャツを着てコピー作業をしている。
ちゃっかりセンターにいるじゃないか。

そういえばなぜかabemaTVのニュース番組にも出たことがある。

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実際どれくらいの早さで出庫しているのかを検証するのになぜか私が選ばれたのだが、私の出庫のスピードが早すぎて、カメラマンさんが追いつけず撮り直しになった覚えがある。

 

あと新聞でもなぜか私がコピーをとる姿が載った。

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かあさん、僕イラストになったよ。

 

話が、それた(司馬遼太郎)。

 

大宅壮一文庫は建物としても非常に面白い。

今回は、上から下へ降りていく『風来のシレン』方式で書庫を紹介していく。

※持って行ったデジカメの調子が悪く、下の方に青い線が入っているものがございますが、霊的なものではございません。ご容赦ください。

 

ちなみに館内図はこんな感じ。

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利用の仕方としては、入ってすぐの受付で消毒検温を行い、入館票に氏名などを記入してもらう。

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1階のパソコンや目録で調べたいトピックや雑誌を調べ、申し込み用紙に記入してもらう。

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この大宅壮一文庫が作った独自の雑誌記事検索ツール『Web OYA-bunko』がめちゃめちゃすごいのだ。

明治時代から最新まで578万件の雑誌記事索引を人力で収録している。

使い方やすごさは大宅壮一文庫の公式の動画があったので、こちらをぜひ。

 

youtu.be
このZINEにちなんで『春風』で検索したらこんな感じだった。

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なるほど、春風亭の亭号がひっかかるのか。

 

調べたい雑誌名、発行年月日、ページ数を記入したら、2階へ行く。
そして申し込み用紙を2階の職員さんに渡せば、さきほどのabemaTVに出た時の私のように出庫担当の職員が取りに行くのだ。

 

2階は閲覧室になっている。

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来館者はここで雑誌を受け取り読むことができる。
雑誌の貸出はしていないが、必要なページのコピーを持ち帰ることができる。

コピーするページ、カラーかモノクロかを指定し受付に申請すれば、さきほどの「かあさん、僕イラストになったよ。」の感じで職員さんがコピーを行うのだ。

 

この2階の受付の奥に事務室、そしてさらに奥に書庫がある。
ここからが迷宮ダンジョンなのだ。

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週刊文春週刊新潮、女性自身などの週刊誌がほぼほぼ創刊号からすべて揃っている。

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東日本大震災の時も雑誌があんまりにもみっちり入っていたため、ほとんど落ちなかったという。

週刊誌の棚の奥にはさらに部屋がある。

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昔は『女の部屋』と呼ばれていたそうだ。

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婦人画報婦人公論など、いわゆる女性向けの雑誌が昔は集められていた場所だったが、現在はNumberやBRUTUS週刊東洋経済、Newtonなどジャンルレスに様々な雑誌が並んでいる。

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所々雑誌が飛び出ているのは、その前の号が出庫されていることを示すためのものだ。

閉館後に雑誌を書庫にしまう際にも目印になるのでとても大事なのだ。

 

1階へ降りていく。

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デジカメの調子が悪く画質がすこぶる悪いが、中々年季の入った味のある階段なのだ。

1階にはすでに休刊もしくは廃刊になった雑誌をまとめた通称『非継続の部屋』がある。

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週報、誰の週報なのか気になる。

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他にも1階には『文學界』、『文藝春秋』、『家庭画報』など月刊の雑誌などが並んでいる。

そしてさきほど紹介した雑誌記事検索ツール『Web OYA-bunko』の前身である『大宅式分類法』で分類された索引カードの棚もある。

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ちなみに『大宅式分類法』については、

公式ホームページに詳細な分類法が載っている。

 

索引について

 

実際に私も脚本の仕事をしていると、リサーチをすることが多い。

その時に、この分類法がいかにすごいかを知った。

雑誌の中にはたくさんの記事が掲載されている。

記事によって内容も視点も違う。

利用者が欲しい情報にいかにリーチしやすくするかを、雑誌読みのプロである職員さんたちが読み解いて検索にひっかかりやすい言葉をチョイスしているのだ。

 

そしてこの大宅壮一文庫は日本の歴史の大きな転換点にも関わっている。

それは1974年に立花隆氏が文藝春秋に掲載した『田中角栄研究』だ。

 

現在は書籍にもなっている。

bookclub.kodansha.co.jp
立花隆氏は、田中角栄首相の金脈について緻密な取材や調査を行い、記事にした。

そして同年11月に田中角栄首相は辞任を表明したのだ。

その時に立花隆氏や氏のアシスタントたちが利用していたのが大宅壮一文庫だったという。

あらゆる雑誌の記事が索引化されており、そこから田中角栄首相とその関連する人物や事物の記事をコピーしていったという。

 

これが当時の索引カード。

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今年の2月にNHK『アナザーストーリーズ 運命の分岐点』で特集されていた。

この回、めっちゃ面白いので見られる機会があったらぜひ。

www.nhk.jpこの一件を機に大宅壮一文庫に注目が集まり、連日大盛況だったという。
ちなみに、「大宅壮一文庫の前から八幡山の駅前までマスコミの車が行列した」という話まであったそうだが、さすがにそれは都市伝説だそうだ。

 

そして地下1階へ行く。

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開館前で暗かったため、異様な雰囲気が出ているが、別に怖い場所ではない。

 

地下1階も『CanCam』『POPEYE』、『Myojo』、『月刊ムー』などの月刊誌(なんでこの4誌?)、そして大判のグラフ誌が多く配架されている。

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そして各階の絶妙な場所に貼られているこの元号早見表。

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これにとても助けられた。
出庫の際はスピード勝負で、およそ10〜20冊の雑誌をなるべく早く出庫して利用者に届けなければならない。
しかし、申し込み用紙に昭和○年、大正○年のみの記載の場合、西暦を瞬時に割り出せないのだ。
そんな時にこの早見表を見て、どの年の雑誌を出せばいいのかがわかるのだ。

 

さらに地下2階にも書庫がある。

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開館前で暗かったため、異様な雰(以下略)

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地下2階は主に週刊誌などの重複雑誌が配架されている。

出庫頻度の高い週刊誌は、予備を用意してある。

利用者同士のバッティングの防げるのだ。

 

そしてこの階には明治大正時代に創刊された雑誌の創刊号コレクションがある。
貴重な資料のため、ほとんどが封筒などで保管されている。
本誌として残っているもので最古の雑誌がこちらの『會館雑誌』だそうだ。

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封筒の裏に解説もあった。

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華族會館の雑誌なのか。読んでみたい。

 

そして背表紙でめちゃくちゃ気になるものがあった。

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『東洋奇術新報』。奇術?まじで?

こちらも裏面に解説が貼られていた。

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「死人蘇生法」や「幽霊を出す方法」、めっちゃ知りたい!!

蘇らせたり出したりしたい!

 

そして合本になっている雑誌の中にはこんなものもあった。

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なんなの。タイトル最高過ぎる。全部読みたい。

『面白半分』のひょうきんさからの『私刑史』の落差よ。

『猥褻と科学』もめっちゃ気になる。そんな合わせ技ありかよ。

 

これで全書庫を巡り終えた。

雑誌を読まずとも十分に面白い施設だと改めて感じる。

 

コロナ禍になる前までは毎月第2土曜日にバックヤードツアーを開催していた。

しかし現在は休止中だ。
コロナがひと段落したら、ぜひとも大宅壮一文庫の裏側も楽しんでいただきたい。
もちろん普段は絶賛開館中なので、お調べ物がある際にはぜひ活用して欲しい。

雑誌の数は年々減っているそうだ。
しかしそれでも雑誌に触れることは、とても価値があることだと私は思っている。
特に自分が生まれる前の週刊誌は調べたいものがなくても、めくっているだけで当時の世相や風俗が伝わってきてわくわくする。
記事だけでなく合間に挟まる広告もたまらないのだ。
雑誌の中には自分が味わうことができなかったその時代の雰囲気が閉じ込められているのだ。

もしもご興味があればぜひ行ってみていただきたい。

 

公益財団法人大宅壮一文庫
〒156-0056
東京都世田谷区八幡山3丁目10番20号
TEL:03-3303-2000

【アクセス】
京王線八幡山駅 下車、徒歩8分
(「赤堤通り」を都立松沢病院正門方向へ直進)
※駐車場(駐車スペース7台)

【開館時間】
午前11時~午後6時
閲覧受付 午後5時15分まで
複写受付 午後5時30分まで

【休日】
日曜・祝日・年末年始

【入館料】
500円(税込)

 



そういえば、職員通用口のプレートが英語かと思ったら思い切り日本語だったのを思い出した。

 

 

このプレートにもぜひ注目して欲しい。

 

 

 

 

相馬 光(そうま ひかる)

文芸やってます。
音声連続ドラマ『BACKGROUND』、世にも奇妙な物語『成る』、『Re:名も無き世界のエンドロール 〜Half a year later〜』、『新米姉妹のふたりごはん』など。
好きな雑誌のコーナーは週刊文春『家の履歴書』、週刊女性『人間ドキュメント』、モノ・マガジン『蘊蓄の箪笥』、JAF-Mateのクロスワードパズル。