4月8日から「スパークス・ブラザーズ」が公開された。
「Sparks」はロン・メイルとラッセル・メイルの兄弟によって結成され、1971年にデビューしたアメリカのバンド。
「スパークス・ブラザーズ」はSparksの活動50周年のドキュメンタリー映画。
今なお活動してて、2015年には「Franz・Ferdinand」とのコラボアルバムを出しているくらい、精力的に活動しているバンド。
このSparksのドキュメンタリーの監督がエドガー・ライト。
「ベイビードライバー」や「ホット・ファズ」、最近なら「ラストナイト・イン・ソーホー」などの監督さん。
デビューが1971年ということで、2022年の現在は芸歴51年。
同期は上沼恵美子さんや研ナオコさん、泉谷しげるさんや欧陽菲菲さん。
たけしさんより少し上だから、会ったら「おう、たけし」って呼び捨てに出来る芸歴。
ユーミンよりは1年先輩で、RCサクセションより1年後輩。
そう考えるとユーミンとかRCサクセション、泉谷さんも凄いけど……。
僕はこの「Sparks」に対してかなり、というかもの凄く思い入れがあって。
気持ち悪い表現をすると、初恋の人をいつまで経っても忘れない、みたいな。
可愛い表現をすると、卵から孵った雛が初めて見たモノを親と思ってどこまでもついていく、みたいな。
怖い表現をすると、自分の子供が急に「前世は漁師をやっていた……」って言い出す、みたいな。
とにかく今の自分を形成している土台にあるようなバンドって感じで。
なので今回は僕とSparksの出会いを語らせていただきます。
趣味全開でお届けするので、よく知らないバンドやアーティストが出て来たらググってみてください。
それをキッカケに好きになってくれたら超嬉しいし、どこかでお会いした時に「紹介してくれてありがとうございました」と言われたら、そのまま叙々苑で焼肉を奢ってしまいそうなくらい浮かれます。
【俺、Sparksに出会う】
僕、高校の時にずっと布袋寅泰さんのラジオを聴いてたんです。
まぁこの布袋さんのラジオを聴くキッカケは「赤松・ミーツ・BOØWY」の回にでも。
それだけでかなりの分量になってしまいますので……。
とにかく、この布袋寅泰さんの「ミュージック・スクエア」はNHKFMで毎週木曜の21時から22時45分という番組。
当時、家にあったコンポなんて予約録画とか出来ないから、始まると同時に録画ボタンを押すっていう超アナログスタイル。
時代的に「カセットテープ」ですから。「ハイポジ」とか出てた時代。
その「ミュージック・スクエア」は、基本、洋楽中心。
「David・Bowie」や「Elvis・Costello」とかも流れるけど、とにかく知らないモノが多かった。
「Sons・Of・Freedom」とか「Sigue・Sigue Sputnik」とか。
今でも「それ誰が知ってんの?」っていうバンドだらけ。
ちなみに、東京に来たばっかりの時にロック・バーに連れて行ってもらって。
お店にあるCDをリクエスト出来るっていうバー。
そこで「Sigue・Sigue Sputnik」があってリクエストしたら、店主に「長い事やってるけど、これをリクエストされたの初めてだよ」と言われたのは、なんか妙に嬉しかった。
まぁとにかく、そんな感じの洋楽がガンガンかかるラジオで、ある時「Sparks特集」をやってくれたの。
1時間45分、丸々Sparks。後にも先にも日本ではないんじゃないかな?Sparksを特集した番組。
田舎の高校生が、そこで初めて「Sparks」に触れるわけですよ
もうね、そのPOPセンスに完全に度肝を抜かれてノックアウト。
どんな音楽って言えばいいんだろう?
イメージだけど「QueenとディズニーのサントラとBugglesをコトコト煮込んだモノに、XTCと中期Beatlesのソース。そしてT・REXとDavid・Bowieの付け合わせも添えて」的な一皿が「Sparks」。
ロックでグラムでニューウェィブで、ダンサフル。オペラっぽい歌い方もあるけどあっさりしてて……う~ん、伝わるかな……?
とにかく来る日も来る日もこのラジオを録音したテープを聴きまくった。
比喩でもなんでもなく、テープが伸びるまで。後半の頃は変に間延びしてたし。
【俺は買うぞ!SparksのCDを!】
それで「よし!CDを買おう!」って決意するわけです。
なぜそんな決意が必要かって話ですよね?
CDくらい、すぐに買ったらいいじゃないかって。
でも、それまで自分でCDを買った事が無かったの。全部人からのダビング。
それに、僕の当時の小遣いが月5000円だったし……。
高校3年間だよ。部活もやっててバイトも出来ないし、許してくれない。
サッカー部でスパイクとかソックスなど諸々もそれで賄えっていうんです。
無茶でしょ?
「昼飯は弁当があるし、間食とか部活終わりで買い食いしなければいい」って。
付き合があるわけよ、高校生には高校生なりに。
そして当時やってた、「親父のパンツを3枚洗うと100円」という仕事。
うちの親父は何故かパンツにウ〇コが付いてたんです。
「これ、なんで?」って聞いたら「痔だから」って言ってたけど。
あれ、嘘だと思うんだよな。痔の人ってそうなるの?
まぁとにかくそのウ〇コが付いたパンツがお湯の入ったバケツに入ってるんです。
それを僕が手で洗って洗濯機に入れるっていう仕事。それが3枚で100円……。
人類史史上、下から数えた方が早いような劣悪な労働賃金で働かされていて。
その反動で19歳くらいの頃、家の金をこっそり盗むようになるんですが……。
財布からお金が少なくなっている母親が聞いて来るわけ。
「あんた、もしかして財布からお金取った?」って。
僕は「ヤバイ!」と思ったら、親父が「こいつはバカだが、そんな事をするような子じゃない!」って信じてるんですよ、僕の事。
僕は「ここだ!」と、「そうだ!それはあんまりだ!」と泣き真似で事なきを得ました。
母親は「そうだよね……ごめん」と謝られて、少し心が痛んだな。
結局、会社の「斎藤さん」という人を疑ってたし。
その時からかな?「あ、お芝居とかの道もいいな」って思ったの。
まぁそれはまた「ごめんね、父さん母さん」の回にでも。
とにかくお金を貯めて買いにいくの。
確か、1992年の春くらいだったかな。
今でこそ「Amazon」だなんだってありますが、当時は街にあるCD・レコードショップに行くしかない。いや、下北沢にあるようなレコード屋じゃないよ。
おばちゃんやおじちゃんが演歌とかと一緒に売ってるようなお店ね。
タワーレコードやHMVもなかったから。
そこに行ったら洋楽とかもアイウエオ順で並んでるんだけど、「L.A.GUNS」という「Guns‘N Roses」の前身バンドが、何故か「ラ行」に入れられているようなお店。
今思ったら、「ラ・ガンズ」ってフランス語とでも思ったのかな?
洋楽に対してそんなくらいの認識しかない、おばちゃんがやってる街のお店。
そこに買いに行くけど、当然ないわけです、Sparks。
サ行の欄を見るけど無いから、一応聞いてみるの。
赤松「Sparksってあります?」
おばちゃん「……え?なに?」
赤松「だから、Sparks。ロン・メイルとラッセル・メイルの兄弟でやってて。アメリカ人なんですが、イギリスの方で評価が高くて」
おばちゃん「……何言ってんの?」
赤松「いやだから、Sparks……」
おばちゃん「あ、Sparks GO GOのこと?」
そうなんです……日本のバンドで「Sparks GO GO」っていうのがいたんです。
数少ない洋楽を聴く友人に「Sparks」の話をしても「Sparks GO GO」の事だと思われるんです……。
そうじゃないという事を説明して、海外のアーティストだと伝えました。
すると電話帳みたいな本を取り出してきて、「ここに載ってるモノなら取り寄せられるから」って渡されて。
そこでやっと見つけたんです!当時日本に取り寄せれたのがSparksのベストだけ。初期の3枚が入ったお得盤。
取り寄せをお願いして、やっと届いたのが1ヵ月後。
今だったらマジで考えられない。ほんといい時代になったもんだ。
これが自分の為に自分のお金で買った初めてのCD。
僕の初めては「Sparks」にあげちゃいました。
もう、聴きまくって、聴きまくって。
Sparksの音楽はワクワクするしドキドキするし。
歌詞はよく分からないけど、とにかくカッコいい。
完全に「POPミュージックとはこういうモノ」って刷り込まれて。
僕の中の「POP」の定義が完全に「Sparks」が基準になっちゃって。
一捻り二捻りもする展開とダンサブルな曲調。
あと、「知る人ぞ知る」ってのもよかったんだろうな。
「俺は知ってるぞ」という優越感。
そのマウント根性の垢は永らく身体にこびりついてて……。
「邦楽とかメジャーなんて聴くか」みたいな洋楽シンドローム。
今考えたらめちゃくちゃダサいけど。
でも、今でも「POP」ってなったら、基準が「Sparks」で考えてしまいがちな自分がいますね。それくらい影響を受けた。
死ぬ瞬間に思い出すんだろうなぁ、Sparksを聴きまくっていた時期とか。
【Sparksの洗礼を受けて僕は……】
そこが僕の始まりというか、完全に染められちゃったというか。
ヒットチャートに登るような邦楽を聴かないし、知らない。
また類友で、洋楽聴いている連中とつるむようになってどんどん拍車がかかるし。
何度も言いますが、今みたいにあれこれ発達してないので、情報収集が難しいの。人に聞いたり、雑誌を読んだり。買えないから立ち読みだけど。
でも、部活や他の友人との付き合いもあるし。
当時は「辛島美登里」とかが流行ってたかな?あとドリカムとか森高千里とか永井真理子とか。
そんな中、僕は「Sparks」。話が合うわけがない。
高校卒業して浪人してやっと東京に行けた時は、もう何を置いてもレコード屋巡り。
布袋さんのラジオでかかったやつを全部メモってたから。
その中での特にお気に入りアーティストのCDを買いに行くために東奔西走。
仕送りとバイト代をギリギリまでCDとかにつぎ込んでた。
一回、手元に460円しかなくなって。あと2日、それで生きないといけない。
当時、タバコを吸ってたんだけど、こんな時に限ってあと2本くらい。
どうする?ってなって、家に帰れば米だけはある。でもおかずも何も無い。
タバコも切れる。
仕方ないと、タバコ一箱(その時は250円の時代かな?)と80円でサッポロ一番と110円でコーラを購入。残ったおつりでうまい棒を買う。
その日の夜にうまい棒とコーラでタバコ吸って空腹を誤魔化し、次の日に米とサッポロ一番を食べるという方法で飢えを凌いだのもいい思い出。
そうまでして、CDを買い漁ってて。そこはやっぱり親が「Sparks」だから。
ちょっと一風変わったアーティストに引っ掛かってて。
『They Might Be Giants』→独特のPOPさ。嵌ったら抜け出せない。
『Sailor』→イギリス感全開の大人のオシャレ。イギリスが匂ってきそう。
『Monochrome Set』→これもオシャレで格調高い。イケオジって感じ。
『Mr.Bungle』→この「Squeeze Me Macaroni」は必聴!
『Altered State』→「Step into My Groove」にやられた!
『Adam&The Ants』→「Dog Eat Dog」とかもうマジカッコいい!
『Be Bop Deluxe』→これぞニューウェイブ!そこら辺好きな人におススメ。
『Carter The Unstoppable Sex Machine』→名前変だけど以外と繊細。
『Oingo Boigo』→明るいし聴いたら嫌な事全部吹き飛ばせる。
『XTC』→これぞイギリス!UK!真面目に一風変わった事をやっている感じ。
もう、紹介し始めたら止まらないくらいに貪り聴いていたかな。
他にも『Dexys Midonighat Runners』とか『Gang Of Four』、『M』とか。ヤバイ……マジで止まらない。もっともっと紹介したい欲にかられる……。
とにかく上記にあるのは、僕の主観ですが、やっぱりちょっと変なんだよね。
耳当たりがいいモノもあれば、なんだこれもあるんだけど、でもやっぱり気になるしワクワクするしドキドキさせてくれる。
やっぱりそれも「Sparks」の洗礼をうけたからだと思うし、そのアンテナで生きてきたからなんだろうし。
だから当然、性格もちょっと変わってくるよね。
「サブカル病」というか、「みんなが良いというモノにはNOを叩きつける」みたいな。
その頃、「Sex Pistols」にも夢中だったから。
「俺は迎合しないぜ」「自分の価値観で生きるぜ」みたいな、激イタのバカ。
他人の作った価値観に乗っかって、それをさも自分の価値観の様に喋り、見下す。
一番嫌い。今そういう奴にあったら、けちょんけちょんに言い負かす自信がある。
でも、ごめんなさい……僕がそんな奴でした……。
【ありがとう、Sparks】
その間にも『Blur』と『Oasis』のブリットポップの直撃があって。
そこまで人気じゃない時に新潟のジョーシンという電気屋さんで、何故か売り物のCDを全部聴けるというサービスがあったの。
そこで「Blur」のセカンド「Modern LIFE Is Rubbish」を初めて聴いた時に、
「このバンド、来るな」とチェックしてたの。
もうとっくに人気があったのに。
で、「Parklife」で爆発。
「Oasis」なんてファーストの1曲目「rock ‘n’ roll Star」聴いたら、もう無理よ。
どの雑誌でも特集組まれたりして。
「俺だけが知っているアイツ」じゃないバンドだけど、やっぱり聴きたいしね。
「やっぱいいモノはいいよね」と少しマウントの垢を落とし始めたキッカケかな。
それでも、誰かに「洋楽聴くんだ。何が好き?」って言われたら「Sparks」って答えてた時期は長かったかな。
「俺、知ってるだろ」感を全開に。本当にどうしようもないな。
でも実は東京に来て以来、「Sparks」追いかけてはなったんだよね。
最初にベスト盤を買っちゃったから、とりあえず他のCDが欲しいってなって。
だから、熱心なファンではないとは思う。
それでも、Sparksがパンクに刺激を受けて作ったアルバム「BIG Beat」や「Sparks」の前身バンド時代「Half Nelson」のアルバムは持ってはいる。
Sparksがゲスト参加した『Les Rita Misouko』も持っている。
でも、ずっと追いかけてきたわけではなくて……。
時々、思い出すくらい。
そんな時、最初にも紹介した「Franz・Ferdinand」とのコラボレーション・アルバム「FFS」を聴いた時は、めちゃくちゃ嬉しかったな。
そして聴いたら、これまた狂喜乱舞。
あの頃のSparksなの!
しかも「Franz・Ferdinand」は大大大好きで、ライブにも行ったくらい好き。
そのバンドとSparksが一緒に……!
「トンカツが好き」「カレーライスも好き」「じゃあカツカレーも好き」みたいな。
「イチゴ好き」「大福も好き」「じゃあいちご大福も好き」みたいな。
「ライオンが好き」「ヒョウも好き」「じゃあレオポンも好き」みたいな。
「人間が好き」「犬も好き」「じゃあ人面犬も好き」……これは違うな。
まぁそんな感じで、もう心掴まれまくり!
しかも見事なまでに「Sparks」で「Franz・Ferdinand」なのよ。
Sparksへの憧れや想いが溢れかえったキッカケだったなぁ。
そんな「Sparks」のドキュメンタリー映画「スパークス・ブラザーズ」。
観ないわけないし、なんならBlu-rayも買うし。
今だから思うけど、あの時「Sparks」と出会って本当によかったと思う。
出会ってなかったら、今ここで何かを書いているなんてこともなかったと思うし。
人生も違うモノになっていたんじゃないかな。
そんな出会いってなかなか無いしね。感謝しかない。
Sparks、ずっと素敵すぎる音楽を作り続けてくれてありがとう!
田舎のしょうもない男子に出会ってくれてありがとう!
エドガー・ライト監督、素晴らしすぎるドキュメンタリー映画を作ってくれてありがとう!
いつか、直接お礼を言いたいな。
まぁ最後に、これを読んでくれている人だけじゃなく、全世界向けて言いたい。
「色々あると思うけど、なんかもう止めない?
そんな事より、『スパークス・ブラザーズ』が始まってるんだし。
一回、それ観てからにしない?」
赤松新(吉本興業所属)
ルミネtheよしもと出演中
第29回ヤングシナリオ大賞・佳作受賞
映画やドラマ、舞台などに出たり書いたり。
Twitterやインスタもやってます。是非に。