新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う自粛のさなか生まれた「吹けよ春風」も4年が経つとのことで。
発刊の経緯や“復刊が続く≒収束しているとは言い難い”とも解釈できるので、気軽に「おめでとう」と言って良いのか難しいところでもあるのですが、再度掲載してもらえる機会をいただけたことに感謝いたします。
これまでも記事中ではコロナ禍での生活や働き方、イベント(主にやついフェス)の記録…と中島みゆきが回ったり巡ったりしそうなことを書き残してきたんですが、唯一やってないことがありました。
●2023年1月 新型コロナウイルスに罹患
そう、当事者になること(別になりたいわけではない)。
ある意味、この「吹けよ春風」における最大の因縁とも言えそうな新型コロナウイルス感染症。
「いかに感染せず、この環境下で安全に楽しく日常を過ごすか」がテーマでもあったこのWebZINE。それにおいて、ついに当事者として、中島みゆきを回らせたり巡らせたりしようと思います。
わざわざ言うほどでもないですが、中島みゆきのくだりは「時代」です。
そんな時代もあったねと笑って話せる日が来ることを願って。
●罹患前夜
悪寒がするな…と思ったのは、二十歳の集い(成人年齢が引き下げられたので成人式じゃないんです)にて会場から式典の模様をライブ配信をする仕事を終えた日の夜。
会場には述べ1,000人あまりの若者やスタッフ。感染症対策のため3部制にして密を避けて…とのことだけど、一日中張り付いているこちらからすれば3回人が入れ替わるのでリスク3倍じゃない?と思わなくもない。
いやいや、今日の今日で感染ってことはないだろう。僕の持ち場がホールの出入り口付近で外気が入り込むので、きっと身体が冷えちゃったんだろう。風邪かな、インフルエンザも流行ってるしな。
その前に行ったところはサウナや映画館…いずれも感染症対策を謳っている施設だしな。
てかそもそも4回めのワクチン接種も受けているし。うんうん。
……二十歳の集いのホール入口にあった県のLINEコロナお知らせサービス、参加者向けだから登録しなかったけど…しておけばよかったな。
●翌日
発熱。オーノー。幸いにして仕事は休日、そして自宅にあった抗原検査キットの結果は陰性。
とりあえず最大の懸念は乗り越えられたので、あとは風邪かインフルか、仕事に行っていいのかどうかの診察を受けねば。
こちとら、向こう1週間で生放送2本とイベントMC1本、イベント運営が1現場に取材2件を控えているんだ。
何はともあれ、まずは発熱外来。が、これが繋がらない。
電話の自動音声に「電話が混み合っているため時間を空けておかけ直しください」と言われ、素直に数時間後にかけ直したら電話口の看護師さんが「今更?」みたいな感じで(※被害妄想)とっくに受付枠が埋まったことをを告げてくる。チクショー!
発熱外来を行っている病院はサイトで検索できるんだけど、どうも普段 病院に行かないので土地勘ならぬ病院勘がない。初診お断りでいわゆる「かかりつけ医」であれば診てくれるという病院もあったけど、これまであまり病院のお世話になる機会も無かったし。
もしかして、ワクチン接種も集団接種ではなく、多少無理をしてでも病院で個別接種をしていた方が「一見さんお断りやけど、まぁワクチン接種に来てくれたからええで」とかなったりしていたのだろうか…と、朦朧とした頭で考える。
電話受付の発熱外来に軒並みお断りされるなか「当日24時に翌日分のWeb予約を開放」というチケットサイトみたいな病院を発見。具合が悪いのに夜更かしをするのはどうなのかと思いつつも照準をこの病院に定め、続いてプランB、C…と計画。「朝7時から予約無しで受付、先着5名の早いもの勝ち」といった尖った病院も背に腹は代えられないのでリストアップ。
まずは初陣である24時のWeb受付。カウントダウンと同時に入念なシミュレーションのおかげですんなり予約枠を確保。
そして実は、常備薬のおかげか体調が良くなり始めている。…まぁ、インフルの可能性もゼロではないので…。
●いざ発熱外来へ
翌朝、平熱。これで病院行くのは気まずい上に、医療が逼迫していると散々言われているなかで迷惑千万ではなかろうか。
とはいえ予約も取っちゃったし、はっきりしないまま出勤しても迷惑だしと病院へ。
ちなみにWeb予約枠は当日朝でもまだ空いていた。前日の即完っぷりはなんだったんだ。
受付の看護師さんに「熱下がっちゃったんですよね~エヘヘ」と照れ隠しをし、PCR検査とインフルエンザの検査を受けてしばし待機。
で、結果はコロナ陽性。自宅の検査キットは何だったんだ。
真っ先に浮かんだことは「逃げ切れなかったか…」。診察してくれた先生や看護師さんが「いまや誰がかかってもおかしくないから」と励ましてくれて少し気が楽に。
とりあえず病院でもらった処方箋を薬局に出し(ちなみにドライブスルー形式)、薬を待つ間に療養の手引きを読んで陽性者登録をし、自宅療養をどう過ごすか考える。
こちらは一人身、近所に友人知人は無し。自宅療養ならネットスーパーやフードデリバリーを駆使して食料品を調達し生きながらえなければならない(一応、症状が軽快して24時間後なら不要不急の買い出しは可とされたが)。さらに、実はボイラーが故障していて銭湯生活だ。
とりあえずゼリー飲料など数日分の食料を買い込み(スーパーの外にあるロッカーでの受取なので非対面)、帰宅。
引き続き陽性者登録を進めるなかで「ホテル療養の希望有無」の欄が。
まぁ単身世帯だし優先順位は低いんだろうけど…希望するだけしておこうか。家だと風呂に入れないし。
●自宅療養生活
出された薬を飲んでHER-SYSに健康状態を入力していると1本の着信。相手は県からで、内容はホテル療養についての意思確認。
療養中は一切ホテルから外出できません、アルコールも飲めません、タバコも吸えません、差し入れは云々…と外界とシャットアウトされることを確認し、それでも良ければ部屋に空きが出次第 専用のタクシーで迎えに来るとのこと。
ということで、いつ必要になるかわからないけど一応のパッキング。暇つぶしはパソコンとスマホとKindleがあればいいとして。しばらく使っていないNintendo Switchも……せっかくだし持っていくか。あとはタオルと数日分の下着と…。
ホテル療養の体験記が載っているサイトを見ると「おやつ・甘味はかなり気分転換になった」とあったが、一般独身男性はそんなものを自宅に常備していない(個人差があります)。とりあえず買い込んだゼリー飲料をバッグにin。まさにinゼリー。
●ホテル療養開始
翌日、県からホテルの部屋に空きが出たので移送しますと連絡。早。
迎えに来たタクシーに乗り込むと車内がビニールで厳重に保護されていて、ドライバーさんとも完全セパレート。「そっか…自分は今こういう扱いなんだな」と実感させられる。
ホテルに到着し、防護服に身を包んだスタッフさんから生活のレクチャーを受け、部屋へ。
そして看護師さんと電話で問診。「HER-SYSへの体温入力はもっと早く」「症状が把握できないので一部の薬は飲まないで」と病院とは違う指示を受け面食らう。
極めつけは「どうして一人暮らしなのにホテル療養を希望したんですか?」。
まぁごもっともだけど「3食付いてるから」とか「家のボイラーが壊れているから」とか「ネタのなりそうだから」とか「自分へのご褒美でたまにビジネスホテルに泊まるので願ったり叶ったり」とか答えたら本気で呆れられそうなので「…一人で野垂れ死にたくなかったから」と答えた。多分呆れられた。
レクチャーのときにもらったホテル療養のしおりにも、県知事名義で「あなたの勇気ある協力に感謝します」てあるんだからなー!
ちなみにその日の晩から指示通り一部の薬を止めたので、喉の痛みと熱と頭痛が復活して最悪でした。
●ホテル療養生活(うめすみの場合)
食事は朝昼晩とお弁当が出るので共有スペースに取りに行く。
共有スペースにはペットボトルやスティックの飲料・スープにインスタントのお味噌汁があるので、必要な分を部屋に持ち帰る。
あくまで療養生活中の飲食物なので、シャバへの…もとい退室時の持ち帰りは厳禁。
お弁当なので野菜が少なめ。野菜ジュースかサプリを持参するのが良いかも。
ホテルとはいえ清掃は入らないので、自分できれいに保つ。お弁当のゴミやペットボトルの空き容器などはお弁当が入っていたビニール袋を活用して共有スペースのゴミ捨て場へ。「一日のうちにこれだけのものを飲み食いしているんだなぁ」と目に見えて分かる感覚が新鮮。
コインランドリーも使えないので洗濯はユニットバスで(洗剤はある)。
ネット環境はホテルのフリーWi-Fiがあるが電波が弱くセキュリティも不安、あと遅い(HER-SYSへ健康状態を入力する時間帯は一斉にアクセスするので速度が遅くなる旨が案内されていたほど)。
ここで、そんなつもりはなかったけど役立ったアイテムが「ノートパソコンとLANアダプタ」。
こういうの。
各部屋にLANケーブルが用意されているタイプのホテルだったので、それをパソコンに繋いでアクセスポイントになることで、ギガを減らすことなくスマホも快適に扱えるようになれたのでした。
ノートパソコンもいまや軽量化でLANポートを搭載しないモデルが多いので、アダプタを持っていてのは本当にラッキーだった…!
ちなみに、アクセスポイントとして使っている最中はパソコンの電源を入れっぱなしにする必要があります。
Wi-Fi環境が整ったことで一番大きかったのは、KindleとNintendo Switch。
コンテンツがダウンロード販売なので、気になった本やゲームを部屋から出ずに購入できたのは非常に快適だったし気分転換に役立った。だいぶ復調した最後の数日間はFit Boxingで体力を戻していた。
●療養生活終了
ホテルでの療養を終え、部屋の片付け。箱ティッシュやトイレットペーパーなどの消耗品類はすべてゴミ袋にまとめて処分。タオル類もおそらく処分されるのでしょう。
ホテルに入室したときは完全に世間から隔離されていましたが、終了して一歩外に踏み出すといつもの日常。扱われ方がガラッと変わり、人生観が変わるような思いでした。
「生放送2本とイベントMC1本、イベント運営が1現場と取材が2件」と抱えていた仕事をすべて休んだため、もはやどうでも良くなった可能性もあります。
●日常に復帰して
その後、仕事を再開して目立った出来事はこんな感じです。
・ほぼ同時期にコロナに罹患した同僚に「俺は症状が辛かったけどお前は軽かったみたいで羨ましいよ」と謎のマウントを取られる。
・取引先との雑談で「実はコロナにかかっちゃいまして」という話が始まると、同僚が「ウチのうめすみもこの間までコロナだったんですよ!」と勝手にバラす。別に隠すつもりはないけど言うつもりもないんだがなぁ。
・ラジオでコロナに罹患したこと、その上で過ごし方や日々の対策を話したら、クセの強い常連リスナーから「そりゃ~『ラジオのネタ』と称して連日遊んでいたらコロナにもかかりますよね♪せいぜいお大事に♪」とメールが来たので「そういうのやめな?」と言ったら翌週からメールが来なくなる。フィルタリングに成功。
日常ェ…。
●終わりに
今回、自分を褒めたいのは「熱が下がったあとも発熱外来を受診したこと」。もし、熱も下がったし風邪だったんだな~と出勤していたらと思うと…。
そしてホテル療養を選択したことで「体調も悪くないしちょっと出かけちゃおうかな~」といった油断を完全に断てたのも良かったです。
幸運にも軽症で済み、周りからも「こう言っちゃなんだけど、うめすみは働きすぎだから身体を休められて良かったんじゃない?」と声をかけてもらえたのもありがたかったです。
が、今回はあまりにもラッキー?な例なので(なるべく面白おかしくなるように書いているし)「うめすみだって大丈夫だったし平気やろ」とか思わずに、きちんと収束に向けた行動を選んでいただければなと思います。
マスクの着用が任意となり、新型コロナウイルス感染症の分類引き下げを目前とした今、再度の感染急拡大が引き起こされないことを切に願うばかりです。
今回の記事も「そんな時代もあったね」と過去の人間が右往左往したときの珍道中として、いつか笑って話せる日が来ますように。
うめすみ
小さなラジオ局に勤めています。
ラジオパーソナリティ、ナレーター、イベントMCを中心に音響PAなど。
コロナ禍によって動画を作る仕事も増えてきました。
木曜夕方と土曜の午後に生放送をしているので、よろしければTwitter(@umesumi)をご確認ください。