歯科検診のハガキが届いた。
広島には30歳、35歳、40歳…といった節目の時期に歯科検診が500円で受けられる、「節目年齢歯科健診」なる取り組みがあるそうだ。
良い取り組みだ。歯医者に対して「痛い」「つらい」といった幼少期からのネガティブな感情を引きずりつづけてきた筆者にとって、こういった外からのきっかけは救いだと思った。
せっかくの機会だし、ということで重い腰を上げ、近くの評判が良さげな歯医者へと向かう。歯の検診なんて10年近くしてなかったんじゃないか。あまりにも重すぎる、苔むした腰である。
家からほど近いその歯医者は、清潔感のある白を基調とした佇まいだった。今日は検診だけとあって歯をいきなり削られるわけもなく、穏やかな気持ちで歯を診てもらう。
歯医者に行かなかったのも特にここまで口内に異変がなかったからだ。歯の痛みのひとつやふたつもあれば流石に歯医者へ駆け込んだとは思うが、これがあまりにも平穏な日々。口の中がパクス=ロマーナな筆者は、大手を振って歯医者への凱旋である。
明るい室内で診察台に寝転び準備は万端。先生(歯科衛生士?)が真剣な顔で筆者の口の中を上下左右としばらく観察すると、やおら口を開いた。
「虫歯が21本あります。」
21?一瞬耳を疑った。え、そんなことある?
成人は親知らずを除くと28本の歯が生えているそうだ。そのうちの21本。21/28。約分をすると3/4。わかりやすい。筆者の歯の、ちょうど75%が虫歯だそうだ。そうか。
それからしばらくは「21…」と思いながらふらふらとその歯医者に通った。ところが一向に治療が始まる気配もなく、クリーニングだけを丁寧にされてはそのまま帰される日々が続いた。先生、21なんです。おれ、おれ、21なんです。はやる気持ちを抑え、何回か通ったタイミングで、治療はいつ終わりますか、と訊くと「2年はかかります」とのこと。待って、そんなにかかるの?そんなのもうほとんど渋谷駅の再開発じゃんか。
都市開発並みの工期を聞かされ、さすがにこれは変かも、と奥さんが通っている歯医者にもセカンドオピニオン的に診てもらうことにした。実は21本虫歯があると言われたんです、と伝えたところ、先生は少し苦い顔をして笑った。
なんでも、「虫歯の基準はいろいろあると思うけど…21本全部の歯を治療する必要はないし、そこまで気にする必要もない」とのこと。
そうなんですか、先生、そうなんですか。たすけてください。
それからというもの、通う歯医者をこちらに切り替え、心が入れ替わったように毎日しっかり歯を磨き、フロスをし、マウスウォッシュで欠かさず口を濯いでいる。21というショッキングな数字も、荒療治にはよかったのだと思う。毎回歯医者さんには歯磨きを褒めてもらえるまでになった。
あと2回の通院で虫歯の治療は終わるとのこと、春風が吹き終わるころにはきれいな歯で笑うことができそうだ。
【おまけ】
ふだん歯磨きをしっかりしている奥さんに教えてもらった歯磨きツールを共有します。みんな読んでくれてありがとな。
・歯ブラシ…ruscello
歯医者さんに「歯ブラシ何使ってますか」と質問されたら、「ルシェロです」と答えると「ああ、それならいいね」と太鼓判を押してもらえるぞ。
・歯磨き粉…シュミテクト歯周病ケア
歯磨き粉はフッ素の配合量が大切らしい。美味しいので好き。
・フロス…リーチデンタルフロス
初心者向けの定番のものっぽい。歯茎が引き締まって歯間がひらいてきたら歯間ブラシに切り替えよう。
・マウスウォッシュ…コンクールF
定番中の定番とのこと。いかにも「スッキリさせます!」系のものは刺激が強いわりにあまり効果を感じなかったのだけど、これは良い感じ。いまやこれで口を濯がない落ち着かない身体になった。
それでは皆さま、歯を大切に。
北向 ハナウタ(@1106joe)
会社員/ライター/イラストレーター