Web ZINE『吹けよ春風』

Web ZINE『吹けよ春風』と申します🌸

ひとりぼっちの世界(次七)

2023 何も見えない(延々のリハーサル)

 

 

(そんな本はないんだけど)

チルダ・エレノス(イレイノス)の「木の実」という絵本は、

境界線のない広い田舎で何度でも立ち上がる果敢な男の話だ。

ただページ総数も奇数だし、最後には倒れていることうけあい、

それでも夢中になる何かが漂っているのは腕や才なのだろうね。

 

いっぽうこちらはあいかわらず。

春はチョークで描かれ微細な粒子をふりまいて、

心がひとりでに歩いていて今、そばに誰もいない。

仕事でとても綺麗なカメラを借りて撮ることがあって、

そのとき「予備です」と手持ちのものでも撮ったりする。

実際は予備ではなく。どうやら未だわかんないご様子。

先日は"中古のゲーム機のカメラで撮る"とか、

"さが"なのかニッチなことばかりしたくなる。

ただ前と違って「こういうこともしないとな」とか、

自分で自分をおどさなくなった。よしあしはわからない。

 

ひとの作品集を編むような仕事に興味があります。まだ早いけど。

自分のことはわからない。はじめもっとどうしていいか、余計わからなかった。

アイスランドでは作家(主に小説家)という職業は英雄と崇められてあるもので、

傑作をうむのはほとんど60歳以上、そこへ至るまでの人生すべてはリハーサル。

潮田さんの「永遠のレッスン」が心にまずうかぶその話はビョークによります。

細野晴臣さんも渡米して観た現地の老年ベーシストの演奏が、

まるで「お豆腐を切るよう」で「これだ」と語っていました。

お二人ともそれを「熟練」というニュアンスでおっしゃっていた。

「これだッ」

大先生の言った話で恐縮で僭越ですが、何かすこし勇気づけられたこと。

実験と実施、暮らしの日曜写真のようなちいさなことにも失調した顔があり、

そういうのを集めて、抱えた中から弁当を組むようなことを時々くり返す。

若いほどたぶん丼でかきこみがちで、そのまま外へ向かうとお腹を痛める。

やがて巧い下手をのりこえる様なころ、やっぱり老年期なのかもしれない、

社会性の際で浮いていてイタいライフワークをちまちまするなかに、

不明瞭な細菌のような、それらを時々すくってあげたい。

うっかり長生きをして、その心がもしのこればだけど。

経年変化の壁を撮ったり行き場のない猫とたわむれたり、

また他所へ行きいろんなお弁当を味わってみて、

ちびちび自分も何か下ごしらえしてみる。

知ったかぶりしない、すぐに数えない。

それから、悪目立ちを自覚すること等。

わたしはそこがまず課題みたいですね。

「木の実」の男はまた別の町へ行った。

けっきょく先が見えると何も見えない。

イカセンターに行きたい)

 

 

・プロフィール・

一円玉貯金をして銀行にいったら結果三千円の赤字ですみました。

写真と地方紙の仕事をしていて猫と婚約した重篤患者です。

次七

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