Web ZINE『吹けよ春風』

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BOY・meets・BOØWYとBowie 後編(赤松新)


〈BOY・meets・Bowie〉

“一生かけて作る音楽アルバム”ってのはあります?
10曲入りの、自分にとっての最強アルバム。
ある人はビートルズが多めに入るっていう人や、またある人は邦楽で固めるっていう人もいるだろうし。
なんだっていいんです。自分にとって最高であれば。
これがなかなか難しい。
どんどん素晴らしい曲が出て来るし、聴くタイミングで毎回印象も変わるし。
CDやサブスクで聴くのと、ラジオから流れてきたのを聴くのでは、また印象が変わるし。
でもなんとなく自分の中で「この曲は入るだろうなぁ」ってのはある。
その中の1曲で、まぁ今後何があっても絶対に入るのは「David・Bowie」の「Starman」。
1991年に布袋寅泰さんが「GUITARHYTHMⅡ」を発表されるんだけど、自身でやられてたラジオで何曲かかけてくれたの。
どれも最高で、「BEAT EMOTION」も「YOU」も「FLY INTO YOUR DREAM」とか、惜しげもなく流してくれて。
そこにカバーしてた「Starman」が流れたんだと思うんだよね。
それも滅茶苦茶かっこよくてさ。
確か布袋さんが和訳した歌詞を言ってくれたと思うんだよな。
「空にはスターマンが待っている 夢を忘れるな そこに価値があるんだ」的なこと。
素敵すぎない?
空を見上げれば、そこにスターマンが見守ってくれているっていうか。
きっとそこにいるんだろうな、見えないけど。
高校生の僕は、なんか本当にスターマンがいるような気がしてて。
なんかあるとこの曲を聴いてたような気がするし、色々な節目節目に必ずこの曲があったと思う。

音楽って人の記憶と密接に関係してるらしく、「これ聴くとあの頃の事を思い出すんだよな」ってのがある。
例えば僕は、浜崎あゆみさんの「Boys&Girls」とかその辺りの曲を聞くと、“ウーロン茶1杯650円”という超割高なカラオケ屋でアルバイトしてたこととか思い出す。
ポテチとポップコーンとポッキーを少量づつ入れたセットAが1000円とかで、バカみたいな値段でやってて、今はもう潰れたカラオケ屋。
「Blur」の「Modern Life is Rubbish」を聴くと、浪人していて通っていた予備校の前にある公園で昼飯を食べていたこととか。
その公園にはよく「祈らせてください」おばさんが多発してて、結構な頻度で声をかけられた。
「こうやって祈ってもらったら、大学に合格しますかね?」って聞いたら、「それはまた違う。勉強しなさい」ってド正論を喰らったこととか。
こんな風に「音楽」と「記憶」って本当に密接なんだなって思う。

それで「Starman」を聴くと思い出すのって、本当に色々な思い出が蘇ってくる。
高校3年生の時、別に好きでもないし一言もそんな事を言ってないのに「ごめん、赤松君とは付き合えない」って電話で言われたこと。
しかも当時なんて携帯とかないし居間にしか電話がなくて。
それを聞いてた親父が「なんだ?フラれたんか?」とニヤニヤしながら言って来て。
初めて「ああ……この気持ちが“殺意”っていうんだな」と思った事とか。
イラつきながら「Starman」を聴いた思い出。

他にも大学に全部落ちて浪人が決まった時の事。
浪人生の癖に、昼間っから映画館に行ってずっとそこにいた事とか。
その頃の映画館は、一回入ったらずっと入れるシステムで。
ちょうどお祭りの時期に朝から映画館に行って同じ映画を何回も見て、夕方に新潟の万代橋を渡っていた時に見たあの景色。
法被着た人達が美味しそうに缶ビールを飲んでいるから、酒なんて飲めない癖に自分もと思って買って飲んだら全部吐いちゃった時の事。
その後に公園で「Starman」を聴いてたな。

東京で一人暮らしした部屋に空き巣が入った時もそうだった。
大学に合格して初めて住んだアパートが「メルヘンランドC」とかいう、ラブホテルみたいな名前のアパートの103号室。
夜に帰ってきたらなんかおかしいの。
部屋がいつもより荒れてるというか、なんかを引っ掻き回した後があるというか。
そしたら、窓ガラスの鍵の所が壊されていて、そこから侵入。
「あ、泥棒だ。警察に連絡するか」って結構冷静だったんだけど、エロ本とかも散乱してたから。
「警察が来る前にこれだけは隠さないと!」って、急いで片付けたこととか。
よっぽど盗るモノがなかったのか、結局、1万円で買って履き潰したエンジニアブーツだけ盗られてた。
警察や鑑識が帰ったあとも「Starman」を聴いたっけな。

初めて出来た彼女との、初めての夜に変な腕立て伏せみたいな動きしか出来なかったこと。
吉本入ってルミネtheよしもとの満員の前で誰一人笑わないという大スベリをかました時の事。
ヤンシナの授賞式後に4人で食事した時の事。
初めて自分の脚本がテレビで放映された時の事。
色んな時に「Starman」を聴いていた気がする。
聴きながら空を見上げるの。

「空にはスターマンが待っている 夢を忘れるな そこに価値があるんだ」

きっとこれからもお世話になる曲の一つだと思う。

もちろん、David・Bowieには名曲がもっともっとあって。
まずはなんと言っても「Ziggy Stardust」のアルバムは一家に一枚の必聴盤。
「Starman」も収録されているし、有名すぎる曲「Ziggy Stardust」もカッコいいのなんのって。
あと僕が大好きなのが「Suffagette City」!!
もう最初からノリノリで聴いていると身体が勝手に動き出すというか。
で、2分50秒あたりで、曲がぶわーっと盛り上がったあとの「oh wham bam thank you maam」ってとこ!
このアルバムでも1,2を争うかっこよさだから聴いて欲しい!
それで言うと、「Young Americans」って曲ね。
ソウルっぽさのある超名曲なんだけど、3分54秒のバックコーラス。
「I heard the news today, oh boy!」
って入るの!!
ビートルズの「A Day in the Life」の歌詞なんだけど、この曲が収録されている「Young Americans」のアルバムにジョン・レノンも参加してて。
「Fame」では作詞作曲で、「Across the Universe」にはバックコーラスやってて。
この2曲も滅茶苦茶かっこいいんだけどね。
ちなみに、「Fame」って曲は1990年に宮沢りえさんが「Game」って曲でカバーして出してます。
その次の年に写真集「santa Fe」を出版。
「santa Fe」なんて、どこに行っても売ってなくて。
まぁ買うお金なんて持ってないけど、当時、カメラ屋の友達がいて、そいつに見せてもらったなぁ。

あとなんと言っても大好きな曲が「Modern LOVE」!!
2020年に日本公開の映画で、わたくし赤松が独断と偏見で決める「赤デミー賞」でこの年の作品賞にも輝いた作品。
「Modern LOVE」がかかった時の圧巻のダンスとタップ。
あれは映画史上にも残るシーンだと思うから、是非観てください!

本当に大好きなDavid・Bowieなんだけど、実は「LET‘S Dance」以降は追いかけてなくて……。
試聴などで聴いてはいたけど、CDを買うまでにはいたってなくて。
David・Bowieが組んだバンド「Tin Machine」もちゃんとは聴いてないかな。
その後のソロアルバムとかも。

でもこの前、David・Bowieのドキュメンタリー映画デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム」を観に行きまして。
もうただただ素晴らしくて、「ああ、そっか……本当に亡くなっちゃったんだな……」って痛感して。
このドキュメンタリー映画は全部デヴィッド・ボウイがナレーションしてる作りになってて、まさに「ボウイの、ボウイによる、みんなの為の、ボウイの映画」って感じで。
ボウイの幼い頃の話も聞けるし、その観ていた世界、頭の中、スーパースターとして駆け上がったのちに起こる苦悩や葛藤、アーティストとしての矜持。
もう全部見せてくれる。
音楽だけじゃないボウイ。
戦場のメリークリスマス」や「ラビリンス」、あと舞台で「エレファントマン」もやってたボウイ。
画家としてのボウイや映像表現を模索していたボウイ。
で、それが全部、音楽に繋がっているという。
とにかく、ずっとアーティストというか、全てのみんなに何かを伝えようという事しか考えてない発信する人。
それを全部見せてくれた、このドキュメンタリー。
そこで流れる最近の曲とかも、やっぱり「David・Bowie」なんだよなぁ。

全世界の人が言っていると思うけど、David・Bowieは本当に宇宙から来た人で地球での役目を終えて、違う惑星に行っちゃたのかも。
だから最後に「★」というタイトルのアルバムを残して。
でも、空を見上げればずっとそこにいるというか、宇宙から見守ってくれているというか。
これから、David・Bowieが残してくれた作品を聴いてみよう。

そんな事を「Starman」を聴きながら、空を見上げて思っています。

「空にはスターマンが待っている 夢を忘れるな そこに価値があるんだ」


赤松新(吉本興業所属)
ルミネtheよしもと出演中
第29回ヤングシナリオ大賞・佳作受賞
映画やドラマ、舞台などに出たり書いたり。
Twitterやインスタもやってます。是非に。